もし「ロボットが涙を流す」と聞いたら、あなたはどう思いますか?
『セイバーマリオネットJ』は、90年代に一世を風靡したアニメの原作小説。
男性しかいない未来の世界で、“感情を持つマリオネット”たちが織りなす切なくも温かな物語です。
人間とは何か、心とはどこから生まれるのか――
そんな深いテーマを、コミカルなラブコメの中に丁寧に織り込んだ名作を、改めてご紹介します。
基本情報
タイトル | セイバーマリオネットJ 第1巻 これが噂の乙女回路 |
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略称 | SMJ |
著者名 | あかほりさとる |
出版社/レーベル | 富士見ファンタジア文庫 |
発売日 | 1996年頃 |
ジャンル | SF、ロボット、バトル、ラブコメ |
巻数 | 全12巻 |
電子書籍リンク | https://amzn.to/3G9EV3W |
あらすじ(ネタバレなし)
あらすじ(ネタバレなし)
舞台は、男性のみが存在する未来の惑星「テラツー」。
かつて地球からの移民船が不時着し、女性が存在しないままクローン技術で繁栄を遂げたこの世界では、女性型アンドロイド「マリオネット」が日常生活を支えていました。
その中でも、感情を持つ特別なマリオネット「ライム」が、少年・間宮小樽と出会うことで物語が動き出します。
ライムは、他のマリオネットとは異なり「乙女回路」を搭載し、自我と感情を持つ存在。
小樽との交流を通じて、喜びや怒り、悲しみといった人間らしい感情を次第に学んでいきます。
やがて、同じく乙女回路を持つ「チェリー」や「ブラッドベリー」とも出会い、3体のマリオネットたちは小樽と共に生活を始めます。
しかし、彼女たちの存在は、軍事国家ガルトラントの総統ファウストの目に留まり、世界の均衡を揺るがす陰謀に巻き込まれていきます。
感情を持つマリオネットたちは、自らの存在意義と向き合いながら、平和を守るために立ち上がるのです。
ここが魅力!見どころポイント
感情を持つロボットたちが切ない
「マリオネットなのに泣く」――この一点だけで、もうこの物語はただのロボットSFではありません。
心を持ったがゆえに傷つき、喜び、誰かを想う少女たちの姿に、ページをめくる手が止まりません。
アニメとは違う深みのある描写
TVアニメとしても人気を博した『セイバーマリオネットJ』ですが、小説版ではキャラクターたちの内面や世界観がより丁寧に描かれています。
とくにマリオネットたちの“心の揺らぎ”がリアルに伝わってきます。
軽妙なギャグとテンポのよい会話
あかほりさとる氏ならではのテンションの高いギャグやラブコメ的なやり取りも健在。
深いテーマがありつつも、決して重くなりすぎないバランス感覚が心地よいです。
読後の感想
正直なところ――読み終えたあと、私はしばらくページを閉じたまま、じっと天井を見つめていました。
「ライムたちは“本当に”マシンなのか?」という問いが、頭の中を何度もループしたんです。
『セイバーマリオネットJ』は、ただのロボットものじゃありません。
ライム、チェリー、ブラッドベリー――彼女たちは、感情を“模倣”してるのではなく、本当に怒って、本当に笑って、そして……本当に、泣いています。
特に印象に残ったのは、ライムが初めて「怒る」という感情に触れる場面です。
彼女の中で芽生える違和感、不快感、そしてそれをうまく言葉にできない戸惑いが、痛いほどリアルで。
読んでいるこちらの心まで揺さぶられるような、そんな感覚でした。
ライム、チェリー、ブラッドベリーの3人がこんなにイキイキと表現されている最大の理由は小樽の存在。
他の誰でもない、小樽だからこそ、ライムたちに感情を呼び起こしたゆですから。
一見すると明るいラブコメでテンポも軽快。でもその奥には、「心とは何か」「人間とは何か」という問いが静かに潜んでいます。
だからこそ、読後にふっと胸を突かれるような余韻が残るんです。
感情を持たないはずの存在が、感情を持つということの重さ――それを私は、愛おしく感じました。
懐かしいアニメの原作小説、くらいの気持ちで手に取ったのに、まさかこんなにも「生きること」に真っ直ぐ向き合った物語だとは思っていませんでした。
気づけば私は、ライムたちの幸せを、本気で願っていたのです。
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アニメを知っている人にも、まったく知らない人にもおすすめの本作。
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まとめ
『セイバーマリオネットJ』第1巻は、懐かしのSFラブコメという枠に収まらない、感情を揺さぶる物語です。
人間ではない存在が「心」を持ち、「愛」や「葛藤」と向き合っていく姿は、私たち読者の心にも深く刺さります。
感情を持つことの意味、誰かを想うことの尊さ――そんな普遍的なテーマを、笑いと切なさで包み込んだ名作。
当時、新刊を待ち望んで読んでいた方も、昔アニメで見た方も、まったく初めての方も、ぜひこの小説版でしか味わえない“心を持った少女たち”の物語に触れてみてください。
きっとあなたも、ページを閉じる頃には、ライムたちの笑顔が胸に残っているはずです。
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